なぜメディラインが医療現場で求められているのか?

どもー代表の峯です。さて、最近「なぜメディラインが医療現場で求められているのでしょうか?」というのを質問受けました。なるほど、ちゃんと背景まで説明した資料はなかったので、少し、メディラインがうまれた背景と狙っているマーケットをご説明したいと思います。
 

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メディラインが必要な背景

2010年、ちょうど東日本大震災が起こる1ヶ月前、法律が改正され、患者さんの情報を含む医療情報をオンラインでやりとりしたり保存したりする事が一定の条件のもと規制緩和されました。今でこそ、当たり前に行っていたオンライン上のやり取りはそれまで規制されていたのです。
それでもITリテラシーがある医療者は、自分の医療知識をアップデートし、そして学び合うために、メーリングリストやクローズドな掲示板サービスなどを活用し細々と行っていました。
しかし世はブログやSNSなどオープンコミュニケーションがメインになりつつありましした。掲示板やメーリングリストを提供していた事業者は、廃れていくサービスは徐々に閉鎖されていきます。医療者たちは、クローズドでかつ仲間内だけで、情報交換する場を求めていました。

規制強化と緩和の狭間の悲劇

メディライン構想の元となったのは、2006年起きた「大淀町大淀病院事件」という医療事故です。これは医療側、患者側と立ち位置によって見方が180度異なる事案です。詳しくは調べて頂ければと思いますが、この事件で医療者と患者、そして世の中とが乖離してしまったほんとうに悲しい出来事でした。そしてさらに事件が起きます。その渦中である医師が、当該事件の患者のカルテを医療専用掲示板に転載し医療倫理が問われ社会問題化しました。
なんでもかんでも医療者側だけの責任を追求する世の風潮に義憤から医師が起こした事ですが、当然ながら医療者しか見ていないクローズドなはずの医療者専用掲示板にもかかわらず、責任問題を問われる事態に多くの医療者は情報発信を萎縮します。
私は情報交換を萎縮する事はかえって生活者側との溝を深め、せっかくの学び合うという文化が後退するのではないか?と危機感を持っていました。
そこで、私はリアルな雇用関係が存在する、もっと狭い範囲、例えば同じ施設内などからネットを活用してやり取りするシステムを作れないか?と着想し、メディラインのコンセプト(当時はWeb版のみ)を何人かの親しい医師に相談した所、一様に医師は目を輝かせて、是非欲しい!と言います。私は確かな手応えを感じました。でも当時はまだそれを実現するリソースは無く自分のネタ帳に載せるだけでした。

なぜメディラインのようなサービスが過去生まれなかったのか?

2013年ごろ、世にはLINEやFacebookメッセンジャーのようなチャットコミュニケーションツールがブームの兆しをみせていました。私は、ジャスト・イン・タイムで情報交換可能な、このチャットツールを医療用として提供する事を着想し、再びメディライン構想を温め始めていました。すでに先行している無料ツールがあるのになぜ?、と思われるかもしれません。でも私は3つのポイントで、医療分野でなら十分勝負可能だと考えました。
  1. 先に説明したように医療者は、コミュニケーションをとりたい欲求は強いものの、オンライン上での情報交換にいまだ強い恐れを抱いています。そして、こうしたIT製品を活用する事に懐疑的です。
  2. 考えてもみてください。もしも、医療者が、LINEやFacebookメッセンジャーを仕事中に堂々と使っていたら患者さんは、どう思うでしょう?。先行する民生ツールは有名すぎるのです。仕事中に使えないツールでは意味が無いのです。
  3. 医療は規制産業です。結局のところ厚労省などの国の政策によって対応はある日180度かわってしまいます。そして国は3つの省庁(厚労省経産省総務省)が4つのガイドラインを公表しています。3省4ガイドラインと呼ばれるオンライン上で患者さんの情報をストレージしたりやり取りする際のルールで、暗号化しなげばならない、日本の法律が適用されるベンダーでなければならない、サーバーは日本になければならない、などなど細かな決まりがあります。そして、残念ながら先行する民生ツールは全て外国製です。これらのルールには準拠していません。これは表立って使っているとは言えないことを意味します。そして何か問題が出れば、全ての責任を追うことを意味します。
そして2014年、確かな手応えとともにシェアメディカルを起業しました。メディラインを世に出し、医療者コミュニケーションの改善を以って医療の世界そのものを回すためです。

なぜメディラインが今後伸びていくのか?

来年、2018年は診療報酬改定が行われます。昨年は選挙もあり増税が見送られました。日本の医療費は膨張を続け、ついには40兆円を突破しました。厚労省のグランドプランは最も医療費のかかる医科大に入院するレベルの患者をなんとか病院に戻し、そして病院に入院する患者を早期にクリニックに通院させるようにし、クリニックに来る軽症の患者は薬局でOTC薬でセルフメディケーションしてもらう方針です。
そして、入院ではなく極力在宅での療養に切り替える。そのために医療者を患宅に向かわせる診療報酬デザインになるだろうと言われています。そうなると、今までのようにクリニックで待つ医療スタイルから、医療者が動く、攻めの医療にスタイルが大きく変わります。そうなるように診療報酬がデザインされるのです。今までのスタイルでは経営が難しくなるのです。
そうなれば、動く医療チーム間の情報連携はどうすればいいのか?という切実な問題も出てきます。そこでメディラインが活躍します。

メディラインは誰の何を解決するのか?

極論を言うとメディラインという単体のサービスを売りたいのではありません。なぜならサービスだけならば、最終的には価格か機能で勝負するしか無いわけです。そうした低レベルな形で勝負してもあまり意味がありません。我々はメディラインをコアとして医療ソリューション、もっと言えば全く新しい、医療イノベーションを起こしたいと思っています。具体的に言えば「医師の働き方改革」です。勤務医と開業医の中間として、ほんとうの意味での医師個人によるフリーランサーな開業です。それを実現するあらゆるツールセットを用意しようと考えています。
そのソリューションの中心にメディラインがいます。
メディラインが変えるのは医療者の働き方そのものです!そはれ、古い世界に解き放たれる紛れもないイノベーションといえるでしょう。
世界を変えるのに大きな力は必要ありません。ほんの少し流れを変えればいいのです。それだけで到達点は大きく変わります。我々は小さな力しか持ちえません、しかし医療の世界の流れを変えるには十分な力です。世界が変わる瞬間を最前列で見れる。それこそ、ベンチャー企業で仕事をする最大の醍醐味といえるでしょう。